稲庭うどんの打ち方・基本の手順
伝統の技を受け継ぐ — 稲庭うどん打ちの基本
「極細の白糸」と称される稲庭うどん。その繊細な美しさと喉越しの良さは、300年以上続く伝統的な手打ち技術から生まれています。今日は、多くの方から「稲庭うどんの打ち方を知りたい」というリクエストにお応えして、基本の手順をご紹介します。
稲庭うどんは秋田県南部の稲庭地方で生まれた伝統的な手延べうどんで、一般的なうどんの約半分の細さが特徴です。その独特の製法は国の伝統的工芸品にも指定されており、自宅で完全再現することは難しいものの、基本的な技術を学ぶことで、家庭でも本格的な手打ちうどんを楽しむことができます。
稲庭うどん打ちに必要な材料と道具
まず、本格的な稲庭うどんを打つための材料と道具を揃えましょう。

材料(4人前)
・中力粉(うどん専用粉):500g
・食塩:50g(水に溶かして使用)
・水:約200ml(季節や湿度により調整)
・打ち粉(片栗粉):適量
必要な道具
・こね鉢(大きめのボウルでも代用可)
・のし棒(麺棒)
・包丁またはうどん切り包丁
・まな板または麺台
・計量器具
・ふきん
伝統的な稲庭うどん職人は「こしき」と呼ばれる専用の木製道具を使用しますが、家庭では上記の道具で十分に美味しいうどんを打つことができます。
稲庭うどん打ちの基本手順
1. 塩水を作る
水200mlに塩50gを完全に溶かします。塩水の濃度は約20%が理想的で、この高濃度の塩水が稲庭うどん特有のコシと白さを生み出します。一般的なうどんより塩分濃度が高いのが特徴です。
2. 粉に塩水を加えてこねる
中力粉をボウルに入れ、塩水を少しずつ加えながら手でこねていきます。全体が均一になるまでしっかりとこね、最終的に耳たぶくらいの硬さになるのが目安です。稲庭うどんの場合、生地はやや硬めに仕上げるのがポイントです。
3. 熟成させる
こね上がった生地をラップで包み、冬場なら1〜2時間、夏場なら30分ほど常温で熟成させます。熟成により、グルテンが十分に発達し、のびの良い生地になります。
4. 生地を薄くのばす
熟成後の生地を打ち粉をふったまな板の上で、のし棒を使って薄くのばしていきます。稲庭うどんは極細に仕上げるため、通常のうどんより薄く(約1mm程度)のばす必要があります。
5. 折りたたんで切る
薄くのばした生地に打ち粉をふり、折りたたんでから包丁で細く切ります。稲庭うどんの幅は約1.3mm程度が理想です。一般的なうどんの半分以下の細さを目指しましょう。
6. 手延べする
切った麺を両手で持ち、少しずつ引き伸ばしていきます。これが稲庭うどん特有の「手延べ」工程です。熟練の職人は麺を肩にかけて延ばしますが、初心者は両手で優しく引き伸ばす程度で十分です。

7. 乾燥させる
手延べした麺を竿などにかけて乾燥させます。伝統的な製法では「二度干し」と呼ばれる工程があり、一度乾燥させた後に再度湿らせて延ばし、さらに乾燥させることでコシのある麺に仕上げます。家庭では一度の乾燥で十分ですが、湿度の低い日を選ぶと良いでしょう。
稲庭うどんの打ち方は、一般的なうどんと比べて細く仕上げる点と、高濃度の塩水を使用する点が大きく異なります。初めは難しく感じるかもしれませんが、何度か練習することで、家庭でも本格的な稲庭うどんを楽しめるようになります。
稲庭うどん打ちに必要な材料と道具の準備
本格稲庭うどん作りに必要な材料
稲庭うどんの命は、その素材の質にあります。伝統的な稲庭うどんは、厳選された材料で作られることで、あの独特の食感と風味が生まれます。自宅で打つ場合も、できるだけ本格的な材料を揃えましょう。
【基本の材料】(4人分・約500g)
- 中力粉(うどん専用粉が理想):300g
- 薄力粉:100g
- 食塩:15g(粉に対して約3.5%)
- 水:150ml前後(季節や湿度により調整)
- 打ち粉(片栗粉):適量
稲庭うどんの特徴は、その極細の麺線にあります。伝統的な製法では、小麦粉の中でも灰分の少ない良質な粉を使用します。市販のうどん専用粉でも十分ですが、より本格的に作りたい場合は、中力粉と薄力粉を3:1の割合で混ぜることで、稲庭うどん特有のコシのある細麺が実現できます。
秋田県稲庭地方の職人たちは、地元の軟水を使用することでしなやかな麺質を実現していますが、自宅では軟水のミネラルウォーターを使うと近い食感が得られます。水の温度は夏場で10℃前後、冬場で20℃前後と季節によって調整するのが本場のテクニックです。
必須の道具と代用品
本場の稲庭うどん職人は専用の道具を使いますが、家庭では一般的な調理器具で代用できます。
【必要な道具】
- こね鉢(ボウル):大きめのステンレスボウルや木製のこね鉢
- のし棒(麺棒):60cm以上の長いものが理想
- まな板または打ち台:大きめの木製まな板が最適
- 包丁:刃渡りの長い麺切り包丁(普通の包丁でも可)
- 計量器具:デジタルスケール(1g単位で計れるもの)
- ふきん:生地を寝かせる際に使用
- 乾燥用の棒:稲庭うどん特有の「二度干し」工程用(物干し竿や菜箸でも代用可)
稲庭うどん打ちで特に重要なのは「のし」の工程です。本場では専用の「のし台」と呼ばれる大きな作業台を使いますが、家庭では清潔な作業スペースを確保できれば十分です。テーブルにシリコンマットを敷いたり、大きめのまな板を用意しましょう。
稲庭うどん打ちの環境設定
稲庭うどんは環境にも敏感です。特に湿度と温度は仕上がりに大きく影響します。
【理想的な環境】
- 室温:20〜25℃(冷暖房で調整)
- 湿度:50〜60%(湿度が高すぎると生地がべたつき、低すぎると乾燥しすぎる)
- 作業スペース:清潔で広い平面(最低60cm×60cm以上)
秋田県の稲庭地方では、冬の寒さと夏の湿度を利用した「寒干し」「二度干し」の技術で独特の食感を実現しています。家庭では完全再現は難しいですが、エアコンで室温を調整するなど工夫しましょう。

稲庭うどん職人の間では「良い稲庭うどんは、良い準備から」という言葉があります。材料計量は1g単位の精度で行い、特に塩分濃度は3.5%前後に調整することで、本場の味に近づけることができます。実際、秋田県の老舗「佐藤養助」でも、創業300年の伝統を守りながら、材料の計量には最新のデジタルスケールを導入しているほどです。
道具と材料を揃えたら、次は本格的な稲庭うどん打ちの技術に挑戦していきましょう。
極細麺を実現する稲庭うどんの基本生地作り
稲庭うどんの命・極細麺を生み出す配合と捏ね方
稲庭うどんの最大の特徴である「極細麺」を実現するためには、生地作りの段階から他のうどんとは一線を画す技術が必要です。私が秋田県の老舗製麺所で学んだ経験から、家庭でも再現できる稲庭うどんの基本生地作りをご紹介します。
まず、材料の配合比は稲庭うどんの命とも言えます。一般的なうどんと比較して、稲庭うどんは塩分濃度が高く、水分量が少ないのが特徴です。これが極細に引き延ばしても切れにくい強靭な生地を生み出す秘訣です。
【稲庭うどん基本の配合(2人前)】
– 中力粉または強力粉:200g
– 食塩:12g(粉に対して6%)
– 水:70ml(粉に対して35%)
– 打ち粉(片栗粉):適量
一般的なうどんの塩分が2~3%程度なのに対し、稲庭うどんは約6%と高めです。これは極細に延ばす際の生地の強度を保つためと、乾燥後の食感を良くするために欠かせない配合です。
生地の捏ね方と足踏み技術
稲庭うどんの生地作りで最も重要なのが「足踏み」と呼ばれる工程です。手では十分に力を加えられない硬い生地を、ビニール袋に入れて足で踏むことで均一に捏ねていきます。
【足踏みの手順】
1. 粉と塩を混ぜ合わせ、水を少しずつ加えながら大まかに混ぜる
2. 生地を丸めて厚手のビニール袋に入れる
3. 袋の口を閉じ、足の踵で5分程度踏む
4. 90度回転させてさらに5分踏む
5. 生地を取り出し、手で折りたたみ、再び袋に入れて踏む
6. この工程を3~4回繰り返す
足踏みの際のポイントは、全体重をかけるのではなく、踵を使って一定のリズムで踏むことです。これにより生地内部にグルテンが均一に形成され、後の延ばし工程で切れにくい強靭な生地になります。
秋田県の老舗「佐藤養助」では、この足踏み工程を1時間以上かけて行うと言われています。家庭では15~20分程度を目安に、生地が滑らかになるまで続けましょう。
「寝かせ」で極上の食感を実現
捏ね上げた生地は、そのまま延ばすのではなく「寝かせ」と呼ばれる工程が必要です。この工程がグルテンの結合を強め、極細に延ばしても切れにくい生地を作り出します。
【寝かせの手順】
– 捏ね上げた生地をラップでぴったり包む
– 冬場は室温(15~20℃)で3~4時間
– 夏場は冷蔵庫で1~2時間
– 寝かせ後、室温に戻してから延ばし作業に入る
寝かせ中に生地内部では「自己消化」と呼ばれる現象が起き、小麦粉のデンプンが酵素によって少しずつ分解されます。これにより、より滑らかでコシのある麺質が生まれるのです。

稲庭うどんの生地作りは時間と労力がかかりますが、この工程を丁寧に行うことで、市販品では味わえない「極細でありながら強いコシと喉越し」を持つ本格的な稲庭うどんを楽しむことができます。
次の延ばし工程に進む前に、生地の状態を確認しましょう。適切に捏ねられた生地は、表面が滑らかで、指で押すとゆっくりと戻る弾力があります。また、切断面に気泡がなく均一な状態であることが理想です。
伝統の手延べ技術:稲庭うどんの打ち方の基本手順
稲庭うどんの伝統的な手延べ技術は、300年以上にわたって受け継がれてきた職人技です。この極細の白い麺を生み出す工程は、単なる調理法ではなく、一つの芸術とも言えるでしょう。今回は、稲庭うどんの打ち方の基本手順をご紹介します。自宅で挑戦するのは簡単ではありませんが、その過程を知ることで、プロの技術への理解と尊敬の念が深まることでしょう。
稲庭うどんを打つための準備と材料
本格的な稲庭うどんを打つには、以下の材料と道具が必要です:
– 中力粉:タンパク質含有量11〜12%の小麦粉(約500g)
– 食塩:粉に対して8〜10%(約50g)
– 水:塩を溶かした塩水(約200ml)
– 片栗粉:打ち粉として使用
– 麺棒:直径3cm程度の細めのもの
– 作業台:清潔な広い場所
伝統的な稲庭うどんは、秋田県の寒冷な気候と良質な水、そして厳選された小麦粉から作られます。特に水質は重要で、稲庭地方の軟水が独特の風味と食感を生み出す秘訣と言われています。自宅で作る場合は、軟水のミネラルウォーターを使うと本格的な味わいに近づけます。
基本の手順:こねる・熟成させる
1. 塩水作り:水に塩を完全に溶かし、塩水を作ります。
2. 粉合わせ:ボウルに中力粉を入れ、塩水を少しずつ加えながら、指先でほぐすように混ぜます。
3. こねる:粉と水が均一に混ざったら、台の上に取り出し、手のひらで押し広げるようにしっかりとこねます。この工程は20〜30分、生地が滑らかになるまで続けます。
4. 熟成:こね上がった生地を丸め、ビニール袋に入れて室温で1〜2時間、または冷蔵庫で一晩寝かせます。熟成によりグルテンが発達し、のびの良い生地になります。
熟成時間は稲庭うどん特有の食感を生み出す重要な工程です。秋田の職人たちは、季節や気温、湿度に応じて熟成時間を微調整し、最適な状態にコントロールします。家庭では、夏場は短め、冬場は長めに設定するのが基本です。
手延べの技術:伸ばす・折る・切る
1. 生地の分割:熟成した生地を適量に分け、片栗粉をまぶします。
2. 一次延ばし:麺棒を使って生地を薄く伸ばします。この時、均一な厚さになるよう注意します。
3. 二次延ばし(手延べ):伸ばした生地を手に持ち、回転させながら徐々に引き伸ばしていきます。これが「手延べ」の核心部分です。
4. 折りたたみと切り分け:十分に伸びた生地を長方形に整え、片栗粉をまぶしながら折りたたみ、包丁で均一な幅に切ります。
5. 乾燥:切った麺を棒などに掛け、風通しの良い場所で乾燥させます。稲庭うどん独特の「二度干し」では、半乾きの状態でもう一度手で伸ばし、再度乾燥させます。
稲庭うどんの特徴である極細の麺線(直径約1.3mm)を実現するには、手延べの技術が欠かせません。熟練の職人は、生地の状態を指先で感じながら、絶妙なタイミングで引き伸ばしていきます。秋田県稲庭うどん協同組合によると、一人前の稲庭うどんを手延べするには、約40回の伸ばし作業が必要とされています。
自宅での稲庭うどん作りは、専門的な技術と経験を要する挑戦ですが、その過程を通じて伝統の奥深さを実感できるでしょう。最初は失敗しても、何度も挑戦することで、少しずつコツをつかむことができます。稲庭うどん打ちの技術を学ぶことは、日本の食文化への理解を深める素晴らしい旅の始まりなのです。
二度干しの秘訣:本格稲庭うどんを作るための乾燥技術
稲庭うどんの伝統技法である「二度干し」は、あの独特の食感と風味を生み出す重要な工程です。プロの技を知ることで、自宅での手打ち稲庭うどんの完成度が格段に上がります。
二度干しとは何か?その目的と効果

二度干しとは、稲庭うどんを製造する過程で行われる特徴的な乾燥方法です。一般的なうどんと違い、稲庭うどんは麺を一度干した後、再び水分を与えてから二度目の乾燥を行います。この手間のかかる工程には、以下の重要な効果があります:
– 食感の向上: コシが強く、なめらかな喉越しを実現
– 保存性の向上: 麺の内部まで均一に乾燥させることで長期保存が可能に
– 風味の凝縮: うどん本来の小麦の香りと旨味を引き出す
– 色つやの改善: 美しい乳白色の麺に仕上がる
秋田県稲庭うどん協同組合の調査によれば、二度干しを行った稲庭うどんは、一度だけ乾燥させたものと比較して、茹で上がり後の麺の強度が約30%高く、食感の持続性も大幅に向上するというデータがあります。
自宅での二度干しの正しい手順
プロの技術を家庭で再現するには、以下の手順を守ることが重要です:
1. 一次乾燥(初干し)
– 打ち上げた麺を麺棒や竿にかけて、風通しの良い日陰で2〜3時間干す
– 表面がやや硬くなり、触るとパリッとした感触になるまで
– 室温20℃、湿度50%前後が理想的な環境
2. 水分の再付与(打ち返し)
– 乾いた麺に霧吹きで均一に水分を与える(水温は20℃前後が適切)
– 全体に水分が行き渡るよう、優しく手で触れる
– 麺の表面がしっとりするまで(約10〜15分間)
3. 二次乾燥(本干し)
– 再び麺棒にかけ、今度は6〜8時間かけてじっくりと乾燥させる
– この際、直射日光は避け、風通しの良い場所を選ぶ
– 完全に乾燥したら、折れないよう丁寧に束ねて保存
季節による二度干しの調整ポイント
稲庭うどんの本場・秋田では、季節ごとに二度干しの方法を微調整しています。これは家庭での製麺でも参考になる知恵です:
夏季(高温多湿時)
– 一次乾燥時間:1.5〜2時間に短縮
– 水分再付与:霧吹きの回数を減らす
– 二次乾燥:風通しを特に重視し、扇風機を弱めに使用
冬季(低温乾燥時)
– 一次乾燥時間:3〜4時間に延長
– 水分再付与:やや多めの水分を与える
– 二次乾燥:暖房器具から離れた場所で8〜10時間かけてゆっくり乾燥
二度干しの失敗を防ぐコツ
初心者が陥りやすい失敗とその対策をご紹介します:
– 乾燥ムラの防止: 麺を均等に広げ、定期的に位置を入れ替える
– カビの防止: 梅雨時期は特に湿度管理に注意し、必要に応じて除湿機を使用
– 割れや亀裂の防止: 乾燥速度が速すぎないよう環境を整える
– 色ムラの防止: 直射日光を避け、均一な環境で乾燥させる
伝統的な稲庭うどん職人の間では「二度干しこそが命」と言われるほど、この工程は重要視されています。二度干しを正しく行うことで、自宅でも本格的な稲庭うどんの味と食感を実現できるのです。この技術を習得すれば、佐藤さんのような都市部に住む和食愛好家も、秋田の伝統の味を日常に取り入れることができるでしょう。
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